虐められていた中学生と医学部生の奇妙で優しい関係【恋愛と結婚】

俺が将来医者になる医大生なんだが、
交通事故を起こし、女子中学生を
轢いてしまった時のHな体験談です

自転車通学から、車通学に変えた途端に
事故ってしまったんです

車通学に医大生って言うと金持ちのイメージがあると思うが
残念ながら、貧乏じゃないが、金持ちでもない

医学部には高級外車で通学してくる
世の中を舐め腐ったボンボンもいるが
最初は自転車通学だった

もともと俺には姉が2人いるが、
その2人とも私立の文系学部に進学して出費があったし
(4年前の時点で2人とも働いていたが)、
俺の医学部進学は経済面で制約を受けていた。

高校の成績はまぁまぁ、進路担当の先生からは

「頑張り次第だが、
不合格の可能性もあるんだからもうちょっと考えろ」

と現実的な事も言われていた。

しかし俺は医学部を諦めなかった。

センターは84%、
国公立を受験したが見事撃沈。

滑り止め(と言っても行く気は無かった)
私立に何とか引っかかった。

俺は浪人を親に申し出た。

しかし

「来年合格する保証はないし、
せっかく合格させて貰えたんだから私立行きなさい、
お金の事は大丈夫だから」

と、親に言われ、
感謝しつつ医学部に入学

奨学金を利用し、アルバイトしながら学生生活を送っていたが、
やはり生活が困窮する事もしばしばあった。

医学書というものはとても高価で、
1冊数万円するものも珍しくない

その教科書を買うのにさえ苦労する俺を横目に、
金持ちーズは相変わらず金持ちだった。

しかし金持ちーズは、育ちも良いぼっちゃんだらけで
性格は悪くないどころか、
俺よりも優しかったりして
コンプレックスを抱えながらも
楽しい大学生活を送っていた。

そんな大学生活の中、
突然親から連絡があった。

「○○(俺の名前)、
実は車が手に入りそうなんだけど、必要か?」

どうやら父親の親戚が新車に買い替えるので、
古い車を譲ってくれるとの事であった。

その車はカローラ、かなり古い年式だった。

カローラ購入当時は最新だったであろうカーナビの車載テレビも、
砂嵐を写すのみで、海沿いの道を走れば
カーナビでは海の上を走っていた。

保険やら燃料費やらで生活を圧迫するのは分かっていたし、
かなり古い代物だったが、俺は

「欲しい!」

と即答した。

事実、大学があるのは田舎だったから
車がないとかなり不便だった

バイクに乗っている人も多かったが、
事故が怖くて乗れなかった。

何より金持ちーズに対する嫉妬心があった。

これで俺も金持ちーズと頭文字Dやってやるからな

俺の車、俺の車

などと意味の分からぬ
厨房っぽい事を思っていた。

金持ちーズの外車とカローラなんて比べられるものではないが、
肩を並べたような気がして嬉しかったのだ。

俺はカローラに乗る日を待ち焦がれていた。

前置きは長くなったがここで5年前の話に戻る。

春休みに俺はカロ(古いとは言っても車を手に入れたのが嬉しくて
カロと名づけていたw)を手に入れ、
実家から大学へと帰る最中だった。

ネーミングセンスなくてサーセン。

(頭文字Dとか笑いが止まらんぜwコップに
水入れてカーブ練習とかテラウケルwwウヒヒwww)

なんて事を考えながら運転していた。

自宅まであと数分というところだった。

目の前に、黒い何かが猛スピードで飛び出してきた。

「(イニシャr)ディィ!」

俺はとっさにブレーキを踏んだ。

ガシャン!!

間に合わなかった。

急いで車の外に飛び出した。

もうパニックだった。

人を轢いてしまったかもしれない。

目に飛び込んできたのは自転車と、
女子中学生だった。

「大丈夫ですか!?」

jcに駆け寄る。

するとjcはムクっと起き上がり

「何があったんですか?あなたは誰ですか?」

「え、あぁ、私はあなたを轢いたんですけど?
大丈夫ですか?痛いところとか?」

「すみません!ボーとして走ってたら…
とにかくすみません!失礼します!」

「待って!あなたを轢きました?!轢きましたから!」

「いえ、轢いていませんから!」

俺も女子中学生も初めての交通事故で、
2人とも相当キョドっていたらしい。

2人が言い合う事は意味を成さず、
その事故を偶然目撃した友人が仲裁に入ってくれ、
事態は収束に向かった。

友人によると、物陰からjcが突然飛び出し接触したが、
本当にかすった程度で自転車がバランスを崩したとの事。

女子中学生に怪我は無く、
カロに自転車のペダルの跡がくっきり付いていた。

本当なら警察とか呼ぶべきなんだろうが、女子中学生が

「いいですいいです!」

と言うし、幸いな事に大した怪我も無さそうだった。

しかし念の為に病院に行って検査を受ける事を言って、
俺の連絡先を中学生に渡して別れた。

あー、俺のカロに傷が

桜が咲き始める季節だった。

数日後、俺はカロに乗って買い物に出かけようとしていた。

その時

「あっ」

振り返るとあの女子中学生が立っていた。

コラコラ人を指差すんじゃないよ。

「あっ」

俺は駆け寄った。

「ひっ!」

後ずさる。

俺「すまん、この前はごめんなさい、
大丈夫だった?病院行って検査は受けた?」

相手が事故の相手、しかし中学生という事で
敬語が入り混じった会話になった。

「…はい、大丈夫です」

俺「そうか、良かった。
また何かあったら連絡ください、じゃあ」

「…」

さらに数日後、俺の携帯が鳴った。

「もしもし?」

「あの…、私、事故に遭った○○ですケド」

この時俺は、
初めて女子中学生の名前と年齢を知った。

jc2年生、ここでは雫としておく。

「あぁ、事故の時はごめんなさい。どうしたの?」

「もう大丈夫ですから……実は相談があって」

「っえ…」

俺は慰謝料とか賠償金とか治療費とかの心配をした。

「自転車の調子がおかしいんです」

「へ?」

「自転車の調子がおかしいんです!」

ここで俺に妙案が思いつく。

(俺の使っていない自転車をあげれば解決じゃないか?
カロが手に入ったし、自転車はあれば便利だが、もう必需品ではないし

「俺が使ってた自転車があるんだけど、
それをあげるよ!」

「嫌です」

ナマイキなjcだな、オイ。

こちとら生活苦しいんだよ。

新学年の教科書買わなきゃいけないんだよ。

空気読めよ!

「ま、まぁ、見てみてよ。
気に入らなかったら別にいいからさ」

その場は何とか言いくるめて、
後日自転車を見に来るとの事になった。

雫とは自宅近くの公園で待ち合わせた。

雫は自転車を見るなり

「こんな自転車は嫌だ!せめて3段階のギアが欲しい」

(クソナマイキなガキめ。ギアなんて贅沢品なんだよ!)

「でもさ~カゴも大きくて使いやすいんだよ」

「嫌です」

「まだ新しいしさ~」

「嫌です」

「荷台もついてるよ?」

「嫌です」

(クソナマイキなJCだなー)

しばらくそんな会話をしていると、
雫の同級生らしき中学生が公園の近くを通っていった。

素早く俺の影に隠れる雫。

どうしたんだ?って思っていると
雫が

「この自転車で我慢する」

「いいの?ありがとう~」

「でも1つ条件があります、
アパートの駐輪場を貸してください」

「別にいいけど、
中学校にも駐輪場があるでしょ?」

「駐輪場を貸してくれないなら
自転車は弁償してください」

「分かった分かったよ」

俺は雫の言っている意味が分からなかった。

自宅から中学校までは徒歩5~6分かかる。

なぜわざわざうちの駐輪場に?

まさか!?これは俺に好意を寄せていて、俺との接点を残すために?

jcとこんなロリ漫画っつーか
変態みたいな展開があるものなのかっ?!

カロ、お前はよくやったよ!

やはりお前は俺の相棒だ!

名誉の負傷だ!

なんて思った。

いや、思うのは俺だけではないはず。

しかしこんな俺の純粋な気持ちをよそに

雫は

「じゃあ失礼します」

と言って走り去っていった。

「気をつけてな~飛び出すなよ~」

俺は雫の背中に呼びかけた。

返事は無かった。

しかしその日以降、雫との接点はほとんど増えなかった。

大学に行く時はもう自転車が停まっていたし、
バイトを終えて帰宅すると自転車は無かった。

中学生と大学生って生活リズム違うんだな。

たま~に会って俺が挨拶しても雫は無言だった。

あぁ~カロ、お前は傷ついたかもしれないが
あんな妄想していた俺も心が傷ついているよ。

そんな妄想をしてから、数ヶ月、7
月だっただろうか、事件が起きた。

その日はバイトも無く、講義も早めに
終わったのでいつもよりかなり早く帰宅できた。

部屋の掃除でもするかな

しばらく部屋を掃除して、
ゴミを捨てようと外に出ると自転車に乗ろうとしている雫に遭遇した。

「やぁ」

「ひっ!!」

「何驚いてるのwここ俺の家なんだからw」

「すみません、では失礼します」

(相変わらず無愛想なガキだなオイ)

ガッシャーン!

ドサドサドサ!

カゴにいれてあるカバンから教科書やら筆箱やらが散乱した。

「大丈夫かwなんでチャックしてないのw」

拾うのを手伝った時、ふと数学の教科書を見つけた。

(懐かしいなwそういえば俺、因数分解が苦手だったっけw)

教科書をパラパラめくる。

「……」

俺は驚愕した。

そこに数学の面影は無く、ひたすら悪口が書かれていた。

『バカ』

『死ね』

『くさい』

『キモい』

映画やドラマでしか見た事が無いような
文句が教科書のページを埋めていた。

しかも教科書もなんだかしわくちゃだった。

まるでお茶をこぼしたように。

イジメか

本当に、こんなステレオタイプな
イジメが存在するのかって思った。

俺が教科書を見つめているのに気づいた雫は、
それを奪い逃げ去るように走っていった。

「待てよ!」

しかし俺の声は無視された。

自宅に戻って雫の事を考えた。

自転車を譲る時も同級生と思われる
中学生から隠れていた。

自宅の駐輪場を使わせて欲しかったのも
きっとイジメ関係した理由があるのだろう

俺は頭の中で雫の事をしばらく考えていた。

次の日、バイトがあったが19時頃に帰宅した。

自宅に着くと、自転車の荷台に座っている雫を見つけた。

「うぉw!お前こんな時間になにやってるんだよw」

イジメの事を感じさせないよう、努めて明るい声を出したと思う。

「…忘れて」

「ん?」

「昨日見たものは忘れて」

「お前、いじめられてるのか?」

今思うと、あまりにストレートな言葉だったかもしれない。

雫は俺から目をそらし、地面を見つめた。

言葉遣いがいつもと違っていた。

「別に」

「何かあるんだったら、相談乗ろうか?」

「別に何もないって言ってるでしょっ!」

物凄い剣幕だった。

どこかで雫の声がこだましていた。

「お茶でも飲んでいくか?」

「いやだ」

「じゃぁお茶をここに持ってきてやるから、ちょっと待ってろ」

俺がお茶を持って戻ると雫の姿は無かった。

4月下旬、大学が休みの日があった。

その日は平日で、中学校は通常授業だ。

俺は雫と話そうと決めていた。

そのためにバイトも昼間にして、
雫の帰宅時間帯は自宅にいるようにした。

今思うとストーカーかもしれないが、自分の部屋にいて、
自分の家の駐輪場を見張っているのだから、何の問題も無い…はず。

夕方、雫があらわれた。

「よぉwこの前はよくも帰りやがったなw」

「ひっ!!」

「今日はお茶用意しておいたぞw」

盆にお茶と菓子を載せて駐輪場に出て行った。

「まぁここでも良いから話していきな」

「余計な事しないで」

「何の事だ?俺は自転車の乗り心地を聞きたいだけだ。勘違いするなw」

「…」

雫は俺の意図している事を分かっているのか分かっていないのか、
いぶかしげな顔で俺を見ていた。

「とりあえず、立ち話もアレだ。それに俺は花粉症だからな、部屋に入りたい。
上がっていかないか?実は高級なヨウカンもらったんだがな、
俺は甘いものが嫌いで食べる人を探しているんだ」

俺が甘いもの嫌いなのは事実だが、ヨウカンをもらったのは嘘だった。

この日のために買ってきたのだ。

一番安いやつだが。

雫は警戒していたものの、ヨウカンの力があったからか、
俺の優しさに触れてか知らないが、俺の部屋に入った。

今思うと話し相手が欲しかったのかもしれない。

「どうだ、自転車の乗り心地は?なかなかいいだろ?」

「ギアがないから上り坂キツイ、乗り心地良くないし、
荷台付いている意味無い。
まぁ我慢して乗ってる。っつーか弁償しろ」

「(ナマイキなガキめ)まぁそう言うなよw」

その日は本当に自転車の話しかせずに、雫は帰っていった。

表情は硬く、俺とも目を合わせようとしなかった。

ゴールデンウィーク、俺は帰省せずに自宅にいた。

『ピンポーン』

ドアを開けると雫が立っていた。

「ヨウカン食べに来た」

「おまwww」

「自転車我慢してやるから、ヨウカンくらい奢れw」

コイツ、いつからこんなキャラになったんだ?

めちゃくちゃナマイキじゃねーかっ!

しかし、何があったのか知らないが以前より格段に明るいし、俺の目を見て話してくれる。

進歩したのか?

「しかたねーな。上がっていきな」

前回はそそくさと帰ってしまった雫だったが、
今回は俺の部屋を見て歓声を上げた。

「るろうに剣心っ!!」

「なんだお前知ってるのかw?」

「蒼紫様かっこいいよ蒼紫……ハァハァ」

俺でさえちょっと世代遅れのマンガを中学生が知っているとに驚いた。

雫はるろ剣を5巻まで読み、帰っていった。

ゴールデンウィークも終わると、
雫がたまに学校帰りに遊びに来るようになった。

俺もバイトがあって、雫の下校時間にいつもいるとは限らないが、そんな時は雫は諦めて帰るだけであった。

「ヨウカンくれ」(20%)

「るろ剣読みに来た」(40%)

「腹減った、何かくれ」(30%)

「おい、ポストに郵便物たまってるぞ」(1%)

大体こんな用件だった。

俺は雫を迎え入れていたが、
いつかイジメの事を聞かなくてはけないと思っていた。

こういうイジメは保護者とか教師が
協力して解決していくものだと分かっていたし、
俺が出る幕ではなかったかもしれない。

雫との関係が壊れるのを恐れていたのかもしれない。

ただ俺は雫が心配だった。

「なぁー、お前、学校どうなの?」

「……やめて」

「目を背けていたら何にも解決しないんだぞ?
何かあるなら話してみろ」

「今日は帰る」

「そうか、またいつでもるろ剣読みに来いよ」

雫がいじめられていて、
しかもまだ何も解決していないのは明らかだった。

でも完全部外者の俺に何ができるんだ

自問自答し、悶々とした日々が過ぎた。

雫はそれ以降遊びに来なくなった。

何だか寂しかった。

夏休み前、また事件が起きた。

その日はバイトがお休みで、夕方から家にいた。

すると駐輪場に人がいる気配がして、雫かと思って外に出て行った。

するとそこには見知らぬ中学生が2人、
雫の(もともとは俺の)自転車のタイヤに画鋲を刺していた。

「お前ら何やってんの?それ誰の自転車?」

中学生「……」

「帰りな、二度とこんな事すんなよ。もう一回やったら許さんからな」

軽い説教して2人は帰した。

2人の中学生はいかにも真面目そうで、
イジメとは無縁に見えたがどうなのだろうか。

これが群集心理(?)というものなのか、何とも恐ろしいものだ。

タイヤの画鋲を抜き取り、俺は雫を待った。

しばらく経って雫が現れた。

「あ…」

「よう、自転車パンクしてたぞwお前気づかずに乗ってのかw」

「え……」

「お前、家どこだ?送ってってやるよ」

この頃、雫は憎まれ口こそ叩くものの、
俺に対しては素直で心を開いてくれるようになっていた。

学校関係以外の話題に限定されたいたが。

俺はカロに雫を乗せ、送っていった。

途中、

「お前、パンクしてる事くらい気づけよw」

「…」

雫は終始無言だった。

雫の家に着いた。

俺は家の前で雫を降ろして走り去るはずだったんだが、
そこで雫母と遭遇した。

「(車から降りてくる雫を見て)雫?
ちょっと何やってるの?
どちらさまですか?」

「え~っと汗汗汗」

アタフタアタフタ

事故の事とか言っていいのか?

いや、つーか事故あったの3ヶ月以上前だぞ、これどーするんだよ。

援助交際と間違われてるのか?

でもまだ明るいよ!

お母さん、勘違いしないで!

「違うの、私が家庭教師をお願いしてたの。
秘密にしていてごめんなさい。俺先生は○○大学の方で、
私が無理を言って先生のおうちで勉強を教わっていたんだけど、
自転車が壊れて送ってもらったの」

雫、お前マジGJ

その後、雫が上手くその場を凌いでくれた。

どうやら事故の事は親に言っておらず、病院にも行ってないらしい。

その日はそれで別れた。

母親は俺の事を胡散臭そうに見つめ

「そうなんですか
あ、ありがとうございました」

とだけ言った。

その場は何とか言い逃れたものの、これで雫に会うのも最後かな、と思った。

数日後、雫が自宅にやってきた。

「腹減った、なんかくれ」

「おまww」

いつもの流れである。

俺「この前は助かったわ。ありがとう」

「お礼言うの、私だし。あの自転車
自然にパンクしたんじゃないでしょ?」

「…」

「分かってたんだ、ただ俺さんの優しさが嬉しくってさ、
少し甘えちゃったよ」

「学校、どうなんだ?」

雫のツンデレっぷりに焦った俺、やっちまった。

また辛い事をえぐるような事を言ってしまった。

「いじめられてるよ。どうしてかな、
私ってみんなと違うのかな…?どうしてかな」

雫の目には涙があった。

雫の話をまとめるとこんな感じだった。

雫の家庭は母子家庭で、
けっこう切り詰めて暮らしていたそうだ。

しかし学校は人並みに通えていた。

ある時、担任教師が生徒の名前と
保護者の名前が載った名簿を教卓の上に
置きっぱなしにしてしまったらしい。

それを見た男子生徒が

とまぁここからは事実無根の噂が広がり、
イジメがエスカレートしていったわけだ。

驚く事に雫は、母親に心配をかけたくないとの理由でこの事を秘密にしていた。

本当にドラマの設定のようだった。

「お母さんは私のために一生懸命働いている、
だから私も頑張らなきゃいけない」

生意気だったガキは、健気な少女へと爆誕を遂げた。

「辛い時はここに来い。何でも聞いてやる」

俺は同じ言葉を繰り返すのみだった。

テラヘタレ。

勇者なら学校乗り込むかもな。

俺は勇者でもなんでもなかった。

夏休みに入ったが、雫は我が家にたまに出入りしていた。

同じアパートに住む大学生友達からは

「援交?ww」

って冷やかされたが、

「家庭教師のバイト」

と言っておいた。

どう見ても言い訳にしか聞こえなかっただろう。

事実、俺は雫の勉強を見てやった。

雫は

「教科書読みにくいけど、教えてくれw」

と言って、イジメをものともせずに学んでいた。

以前より雫は強くなっていた。

雫は俺に心を開いてくれているようだった。

「この悪口、テラ幼稚ww」

と言ってイジメをネタに2人で盛り上がったりした。

単に強がっていたのだろうか…?

俺のカロに雫を乗せて出かけたりしたら喜ぶかな~
とか思ったけど、何故かそこまでしたらいけない気がして、
本当に家庭教師と話し相手で終わっていた。

「大学では何を学んでるの?」

「今は病理学とか薬理学だな」

「ビョウリガク…?ヤクリガク…?ナニソレ?」

「教科書見せてやるよ」

教科書を机に置いてそれを眺める雫だったが、
次の瞬間、お茶を机にぶちまけた。

俺&雫「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!」

俺は貧乏だったから書籍は
極力丁寧に扱っていたから、ショックだった。

「ごめんなさい」

「(あーぁ、こんなにしちまって)まぁ仕方ねーな。
お前の教科書と一緒だなw」

「wwww」

こんな感じで、雫と俺は仲良くなっていた。

ある日、ピンポンが鳴ったので雫かと思って
ドアを開けると、そこには雫と雫母がいた。

雫は俯いたまま、黙っている。

「先生、ちょっとお話したい事が
あるのですがお時間よろしいですか?」

つまり雫母は俺と雫が男女の
関係になっていないか心配だったようだ。

確かに、大学生が自宅で、
しかも無料で中学生に勉強を教えるのは不自然極まりない。

俺はイジメの事を雫母に言おうか迷った。

「あの……いつもタダで教えていただいては恐縮ですし、
先生にもお邪魔でしょうし、
もう家庭教師は辞めさせようと思っています」

「はぃ……(そりゃそうだろうな、
俺から雫を遠ざけたいよな。)」

「今までありがとうございました」

「待って!家庭教師だけじゃないの!でもね、
先生と一緒にいるのってとても楽しい。
だから辞めさせないで、お願い!」

正直、俺が雫の中でどれほどの
存在になっていたかは知らなかった。

しかしこの言葉に俺は不覚にも目頭が熱くなった。

母親は

「やはり(交際してるのね)フムフム」

みたいな顔を俺にむけている。

俺を軽蔑するような目をしていた。

いや、違うんですケド

雫が語り始めた、
もう真実を言うしかなかった。

自惚れるわけではないが、
言わなければ俺とは会えなくなるからだ。

中学校でいじめられている事、
事故に遭って俺に出会った事、俺がやった事

雫母は驚きを隠せなかったようだが、
イジメに耐えていた雫と、
それに気づけなかった自分に涙していた。

そして

「先生、これからもよろしくお願いします」

と言って頭を深々と下げた。

その後、教師と保護者の話し合いが持たれたが、
この教師が役立たずで、
ほとんど何もしてくれなかった。

雫はイジメに関して多くを語らなかったが、
イジメを行う生徒と向かい合って話し、
自らの力でイジメを終息させたらしい。

イジメを自分で終息させるってすごくね?

雫は中学生としての平穏を取り戻したようだ。

俺の役目は終わった。

そう思っていたが、雫は相変わらず

「腹減った」

と自宅へ来て、お菓子を貪って帰っていった。

たまに夕飯作ってくれたりした、
料理下手だが。

家庭教師として雫と接していたが、
母親からは謝礼を頂くようになった。

激安ではあった(時給300円くらいw)が、
もともと謝礼なんてあてにしていなかったので
気持ちが嬉しかった。

しかしその謝礼もお菓子となって雫の胃袋へ落ちていった。

むしろ赤字。

雫家で勉強を教える事も提案したが、
雫は俺の家での指導を希望した。

雫は、母親の事が苦手とかそういうわけではないが、
母親の前ではどこか緊張してしまうようだった。

雫母も俺を信用してくれているようで、
俺の家で指導を続けた。

雫が中学校の卒業式の日に挨拶に来てくれた。

「先生、私、最後の半年間はとっても楽しかった」

「(最後の半年ってのが寂しいが)そりゃあよかったな、
卒業おめでとう」

「先生がいなかったらイジメを止める勇気もなかった、
自殺も考えてた。先生には感謝してる」

「そうか」

俺は卒業のプレゼントとして花束を用意していた。

「ナンダコレw」

「まぁ受け取れ、元気でやれよ」

俺に下心が無いといったら嘘だった。

雫は公立高校に進学した。

入学後しばらくして挨拶に来てくれた。

高校では吹奏楽部に入部し、
楽しく生活していた。

部活が忙しい上に、雫の家から高校への通学路から
俺のアパートが外れていて、我が家を訪ねてくる事もめっきり減った。

それでもたまに

「腹減った」

はあったし、テスト前などに勉強を見てやった。

勉強はよくできたし、要領も良かった。

たまに夕飯作ってくれるのは変わらないが、
部屋の掃除とかまでやるようになった。

「先生には勉強タダで教えてもらってるからね!」

と言っていた。

かわいいな。

この頃、雫は女性らしくなっていった。

化粧もするし、胸も出てきていた。

俺は雫の事を女性として
認識するようになってしまっていたのである。

何で女子高生が俺の家で菓子食ってんの?何で?

これ、何なの?家庭教師系とかエロくないか?

何て意味も分からずパニクってしまう事があった。

雫→高2、俺→大5の冬

「お前、大学どうんの?」

「行かない、就職する」

「母親とは相談したのか?」

「してない。だって私の人生だもん、
そもそもお金ないし、お母さん助けたいし」

「俺でもなぁ、云々かんぬん
(←俺が若者だったら絶対にUZEEEEE!って思う内容)」

「うるさいなぁ、私の勝手でしょ!もう勉強は高校までで良いよ!」

「云々かんぬん(←俺が若者だっ以下略)」

「私立大学行ってるお坊ちゃまに、
私の気持ちなんか分からないよ!もう帰る!」

「ちょっとでかけよう」

雫を誘って海に行った。

もう冬だから誰もいなかった。

しかも寒かった。

そこで何を話したかはよく覚えていない。

緊張していた。

女性をどこかに連れて行くなんて事した事無いし、恋人なんて高2以来いないし。

とにかく人生やら、勉強やらの事を話し、結局ヘタレな俺は

「雫の好きにすれば良い、
ただ後悔だけはするな」

という事を言ったと思う。

助けてやりたかったが、
ただの学生に何かできるわけではない。

たまにカロで雫家の前を通るが、
偶然お母さんを見つけて話しかけてみた。

雫は大学進学と就職で悩んでいるようだった。

親としては多少苦しくても進学してほしい、
じっくり話し合うつもりだ、と言っていた。

俺は

「雫はお母さんの気持ちも、
自分自身の気持ちも十分分かっている。
結論を出したら反対しないでやってください」

とだけ言った。

雫はその後も勉強を教わりに来たが、
それも高3の6月を最後になった。

1年前、俺は大学病院に就職が決まり、
当分引越しする予定も無かった。

(そう言えば雫も卒業だな。
結局就職したのかな……家に行ったら迷惑かな

と思っていたら、ピンポンが鳴って雫が訪ねてきた。

「よかった、先生まだ住んでた、
引越してなくてよかった、久しぶりw」

久しぶりにあった雫はもう随分大人びて、綺麗な女性になっていた。

カロの前に飛び出してきた中学生の姿はもうない。

「あぁ、久しぶりだな、
大学病院に勤めるから当分はここにいるつもりだ」

「そうなんだ。でね、私、やっぱり就職する事にした」

「そうか、お前が出した結論なんだな、
よく頑張ったな」

「へへ、何?褒めてくれるの?」

「あぁ」

「実はね、先生、結構前だけど、就職決まったよ」

「そうか、そりゃぁおめでとう、
悪いが今回は花束はないが」

「wwwでね、私、この街出ていく事になった。
お母さんは心配だけど、ちょっと都会にも行ってみたいし、
地元は就職口少なかったし。
でも最終的には地元戻ってくるつもり」

「そうか、元気でな」

「うん…」

しばしの沈黙

正直、辛かった。

できればずっと一緒にいたかった。

この街を出て行ったらまた他人になってしまう気がした。

俺は焦るというか、悲しむというか、そんな気持ちを抱いた。

そして俺は完全に血迷った行動に出た。

「なぁ雫…結婚しないか?」

「え……?」

「結婚しないか?」

「けっこん?」

「あぁ」

「まだ付き合ってもいないのに?w」

「あぁ、そうだ」

「キスもした事ないのに?w」

「じゃあ今からしよう」

「私に彼氏がいたらどうすんの?w」

「お前がそういう事を言う場合、おそらく彼氏はいない」

「うざwそういう理屈っぽいところ嫌い」

「じゃあ理屈抜きで結婚しよう」

「少しは考えてものを言えw」

しばしの沈黙

「結婚しよう」

「ちょっと黙っただけじゃねぇかw」

「結婚しよう」

「言い方の問題じゃねーよw」

「考えておくwまた明日来る」

なんでこんな行動に出たのか分からない。

ただ雫と一緒にいたい=結婚だ!というおそろしく短絡的で直感的な結論に至った。

雫も冗談だと思ったかもしれないが、俺は本気だった。

次の日、雫が家に来た。

「……昨日のアレ、本気なの?」

「あぁ」

しばしの沈黙

俺は雫をそっと抱いた。

泣いているようだった。

初めて雫をこんなに間近で見る。

良い匂いが漂う。

頭を撫でた。

雫は俺の胸に顔を押し付けた。

雫がそっと抱き返してきた。

俺たちはそのまま抱き合っていた。

「俺がお前を支える」

「うん」

「ずっと一緒にいよう」

「うん」

「一緒に幸せになろう」

「…うん」

「毎朝味噌汁作ってくれ」

「うん」

「一緒の墓に入ろう」

「土葬?火葬?」

「…そこか」

「うん」

こんな意味不明な会話を交わし、
俺たちは初めてキスした。

結局雫は就職を取りやめ、俺と同棲する事になった。

しかし2人で冷静に考え、結婚は早すぎるという事で付き合う事になった。

雫母は

「やっぱりあなたたち最初から?ニヤリ」

みたいな事を言ってたが、快諾してくれた。

すみません、本当に最初は違うんですケド。

俺の両親も

「早く孫が見たいわ~」

と言っていた。

俺の両親との会話。

「初めまして、雫です。
俺さんとお付き合いさせて頂いております。以下略」

俺父「いや、こんな俺ですけどね、よろしくお願いします」

俺母「理屈ばっかり言う子ですが、イラついた時は遠慮なく」

俺「おいおい……」

雫「はい、ぶっ殺しちゃいますw」

雫以外「え……」

雫「(俺の方を見て)土葬がいい?火葬がいい?」

俺「wwww」

雫「お義母さんは、どんな味噌汁作るんですか?」

俺「wwww」

両親「?????」

ついこの間、カロを買い替え、新車で役所に行って入籍してきました。

2人が事故を起こした日に。

カロにはもちろんペダルの跡。

2人が出会った瞬間が刻まれています。

この傷と俺たちは並んで写真を撮りました。

人と人が出会った瞬間が今も残っている事が、何だかとても珍しい気がしたので。

でも出会った時はただの他人だったんです。

そこでその瞬間と決別して、他人じゃなくて夫婦になりたいねって事で納車と入籍の日を合わせたわけです。

カロとの別れは惜しかったけど、新しい車と共に夫婦はスタートしました。

終わりかよ、ってガッカリしている方もいるかもしれません、ごめんなさい。

「どうせ釣りだろ、乙」

っていう人もいるかもしれません、各自で判断してください。

これから雫と幸せな家庭を築けたら、と思います。

人生本当に何があるか分からない。

人身事故だって出会いになるんですよ。

みなさんも普段の生活の中に、

「何か」

があるかもしれません。

事故はよくないけど。

最後になりますが、長文乱文にも関わらず読んでいただいてありがとうございました。

完全に自己満足です。

文才がなく、読み苦しい部分も多くあったと思いますが、最後まで読んでくださったみなさまに心より感謝いたします。

好きな味噌汁の具はネギと豆腐です。

雫はほとんど毎日味噌汁作ってくれますが、夏にはキュウリとかトマトを具にしようとしていました。

夏野菜だったらナスはOKかと思います。

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コメント

  1. ラッキーデストロイヤー雪風 より:

    貴方達ご一家に幸運を!

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